大腸炎

大腸炎とは?

大腸炎

大腸炎は、直腸や結腸などを含む大腸が炎症を起こす病気で、下痢や血便など主に消化や排便に関する症状が生じます。大腸炎の原因は様々で、それらの原因に応じて種類が分かれています。

大腸炎の種類

感染性腸炎

感染性腸炎は、ウイルス、細菌、寄生虫などの微生物によって引き起こされる大腸炎です。原因となるのは食中毒や、O−157、サルモネラ菌やノロウイルス、ロタウイルス、魚に寄生するアニサキスなどです。症状には強い下痢や吐き気、発熱などがあり、場合によっては命にも危険が及ぶ可能性があります。

虚血性腸炎

虚血性腸炎は、腸管の血流が不足することによって起こる大腸炎です。動脈硬化や高血圧、糖尿病や脂質異常症など血管に損傷が起きやすい病気にかかっている方や、便秘など腸管に負担がかかる症状がある方が発症しやすい傾向にあります。症状としては、強烈な腹痛や粘膜障害から来る下痢、鮮血便などが挙げられます。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸内の粘膜に慢性的な炎症と潰瘍(びらん)が生じる自己免疫性の病気です。原因は遺伝的な要素や食べ物や化学物質、腸内細菌等とされていますが、2023年現在はっきりとした答えは出ておらず、厚生労働省指定の難病となっています。主な症状は下痢、腹痛、出血、発熱などで、重症化して腸壁に穴が開いたり、慢性化して大腸がんを合併したりする可能性があります。

クローン病

クローン病は潰瘍性大腸炎と同じく自己免疫性の病気で、消化管全体にわたって炎症が起こる慢性的な病気です。原因は不明で、こちらも厚生労働省指定の難病となっています。主な症状は口から肛門までの消化管全体に発生する炎症、腹痛、下痢、血便、発熱、体重減少などです。

腸管型ベーチェット病

ベーチェット病は、皮膚、眼、血管、中枢神経に加えて消化器にも炎症を引き起こす病気です。このうち消化器に炎症が見られるベーチェット病を腸管型ベーチェット病と呼びます。潰瘍性大腸炎、クローン病と同じ指定難病で、現在根本的な原因はわかっていません。腸管に生じる潰瘍や炎症が主な症状で、それらを原因として腹痛や下痢、出血などが見られます。

大腸炎の検査

大腸炎は種類によって性質が大きく違うため、問診や患者様の症状の観察を通じて考えられる原因を絞り込んでいく必要があります。

より的確な治療をするためには、そこからさらに検査をして原因を特定する作業が必要です。その際は以下のような検査の中から、状況に応じたものを選んで実施します。

※当院で実施していない検査につきましては、適切な専門機関をご紹介いたします

迅速検査

簡易的なキットを用いて、原因となる病原体を調べられる検査です。

便培養検査

便中に存在する細菌やウイルスなどを培養し、O−157、サルモネラ菌やノロウイルスなど感染性腸炎の原因菌の存在を確認するために行う検査です。

腹部CT検査

X線を使って腹部の詳細な断層画像(輪切り画像)を撮影することで、大腸や周囲の組織の状態を確認するために行う検査です。

内視鏡検査(大腸カメラ検査)

肛門から柔らかい管状のカメラを入れて、直腸と大腸の内部を直接観察します。炎症やポリープ、潰瘍などの異常の確認だけではなく、小さなポリープの切除や生検を行うこともできます。

(※大腸カメラ検査について詳しくはこちら→リンク「24.大腸カメラ」)

血液検査

血液中の炎症マーカーや感染の兆候を調べることで、大腸炎の状態を把握します。白血球数やCRP(C-反応性蛋白)、貧血の有無などがチェックされます。

便潜血検査

便中に微量の血液が混じっているかどうかを調べる検査です。大腸内の出血やポリープなどの異常を見つけるのに役立ちます。

便中カルプロテクチン

潰瘍性大腸炎の炎症の程度を確認するために行う検査で、便中に存在するカルプロテクチンという炎症マーカーを測定します。

注腸X線検査

肛門から大腸にバリウムなどの造影剤を注入し、X線撮影を行うことで大腸の形状や粘膜の状態、腫瘍や炎症の有無などを確認する検査です。

腹部超音波検査

音波を使って内部組織を観察し、大腸の異常や液体の蓄積を調べる検査法です。病変の有無や腫瘍などを確認します。

小腸造影検査

バリウムなどの造影剤を飲む、もしくは細いチューブを口から入れて十二指腸に造影剤や空気を注入した後、X線撮影を行い、小腸の状態を確認する検査です。

カプセル内視鏡検査

カプセル型の内視鏡カメラを飲み込むだけで、消化管内を観察することができる検査です。出血、潰瘍、ポリープなど、様々な症状の発見に役立ちます。内視鏡検査が難しい場合に使用されます。

バルーン小腸内視鏡

小腸を観察するための内視鏡で、管に設置されているバルーンを膨らませることで腸壁を詳細に観察します。

MRエンテログラフィー

MRIを使用して小腸や大腸の詳細な画像を得る検査で、炎症や腫瘍などを確認するために行います。

遺伝子検査

遺伝子レベルでの異常を調べる検査で、潰瘍性大腸炎やクローン病、腸管型ベーチェット病といった特定の遺伝性の大腸疾患を特定するために行います。

針反応

皮膚に針を刺して特定の抗原に反応するかどうかを調べる検査で、腸管型ベーチェット病が疑われる場合に行われます。

脊髄検査

脊髄液を採取してその中の細胞や成分を調べる検査で、中枢神経系の病気を評価します。大腸炎では、これも腸管型ベーチェット病が疑われる場合に行われます。

大腸炎の治療

大腸炎の治療方法には以下のような様々な選択肢があります。検査と同様、これらも原因に応じて適切な治療方法を選ぶことが、治癒のためには大切です。

※当院で実施していない治療につきましては、適切な専門機関をご紹介いたします

抗菌薬

大腸炎が細菌感染によって引き起こされた場合、特定の抗生物質を用いて細菌を殺すための薬です。感染の原因を特定し、適切な抗菌薬を処方することが重要です。

抗炎症薬

炎症を抑える薬で、症状の緩和や組織の損傷を軽減する役割があります。一般的に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や5-ASA(5-aminosalicylic acid)などが使われます。

ステロイド

強い抗炎症作用を持つ薬で、重度の炎症を抑えるために使用されます。ただし、副作用があるため、長期的な使用は避けられるべきです。

血球成分除去療法

免疫系を調整するために、特定の血液成分(免疫細胞)を除去する治療方法です。潰瘍性大腸炎やクローン病のような自己免疫疾患に対して効果が期待されます。

生物学的製剤

免疫系に作用して炎症を抑える新しいタイプの薬です。モノクローナル抗体などが使用され、重症な大腸炎に対する治療に効果的なことがあります。

免疫調節剤

免疫系を調節する薬で、自己免疫疾患に対する免疫反応を抑制します。

栄養療法

栄養状態を改善し、患者の回復を支援するために食事療法を行います。特定の栄養素の摂取や栄養補助食品を用いることがあります。

外科治療

薬物療法や他の治療が効果的でない、または合併症が重篤な場合には、手術が必要になることがあります。例えば、大腸の一部または全摘出が行われることがあります。

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